「ネオ・シティポップ」という新しいカウンターカルチャーの在り方の可能性 ―(4)戦略性は「悪」なのか
前回から間が空いてしまいましたが、
ACCが活動をしていくにあたってのその戦略性にフォーカスが当てられていることに嫌悪感を抱く人がいるのはなぜなのか、という前ふりを1回目でしてしまっていたので最後にその点について考えていきます。
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ACCの戦略性自体はシーンに対する一種の対抗的態度なのではないだろうか。
「友情」「努力」で人気者になるという「勝利」を手にするというモデルが理想化されたロックフェス的バンドは、そのプロセスの「純粋な地道さ」が、ファンからの求心力となっている節がある。
「大人たちに対する我々若者の気に入らない気持ち」を代弁することをコアメッセージにしているバンドたちだからこそ、
裏を返せば、リスナーの側も、彼らが成功しているのは「大人の事情」などではなく、純粋な努力によって地道に力をつけた結果だ、というサクセスストーリーをバンドに求め、
そういったバンドにさえ多かれ少なかれあるであろう「商業的な戦略」という側面を、自らの中で都合よく不可視化しているのではないか。
(周りの「大人たち」の意思もあるだろうが、100%本人たちが操り人形だということもないだろう)
だからこそ、メンバー自身から、プロモーションや戦略などという「商業的な臭いのする」「大人の汚い手」を使うことが喧伝されることは、リスナーから嫌悪感を抱かれやすいのではないだろうか。リスナーにしてみれば、信じていたモノの見たくない部分を見させられているようなものなのだから。
似たような例でいえば、クラムボンのミト氏が3月のアルバム発売の際にインタビューが想起される。
ミト氏による、
アーティストもプロモーションに関わっていくべきだという内容の発言、
あるいは、クラムボンのメンバーもリスナーが想像しているように仲良しこよしで楽曲を作っているわけではない、という点が明らかになった発言、
はかなりの波紋を呼んだ部分であった。
このインタビューでクラムボンが嫌いになったというつぶやきも見かけた。
(おおかたの人からは賛同されてはいるのだが。)
クラムボン嫌いになったなう
— いわさきゆき (@FUZZMISSILEFOLK) 2015, 3月 24
※ツイート日は上記記事がアップされた日付かつ当該アルバムが発売された日付である。
このつぶやきではインタビューを読んで嫌いになったのか、そうだとしたらどの部分を読んでそう感じたのかは定かではないが、雰囲気だけはわかってもらえればと思いあえて引用させてもらいました。
それは1つには、リスナーがバンドに抱く「メンバーの友情」という理想が否定されたからではないだろうか。
このミト氏のインタビューは、アンチテーゼというより、そうでもしなければ、ポップスのシーンで戦っていけないという切実さを伴うものであったが、
いずれにしても、自身のバンドに対するドライで冷めた姿勢をあけすけにするというのはリスナーの理想を打ち砕くのには十分、ということが分かる事例である。
ACCについての記事の多くは、音楽的な側面を取り上げていないからダメだ、というGotchのような意見もあろうが、
彼らに関しては再三指摘してきた通り、戦略的でドライなあり方をある種、他の昨今のバンドにはない武器として打って出ていこうという姿勢が見られ、それ自体がシーンに対する反骨精神、アンチテーゼであるという点で、特記すべきことだとも考えられる。
(この点は、(1)~(2)で細かく分析してきたのでぜひ読んでいただければ。)
「戦略的でドライなバンドのあり方」を見て不快になる人というのは、
「友情」「努力」で人気者になるという「勝利」を手にするというモデルが理想化されたロックフェス的バンド、という
(こうした言い方が許されるのであれば)いわば「古いスタイル」に執心する古いタイプのリスナー…少なくとも、これまで述べてきたような新しいカウンターの波に未知の違和感を抱きながら眉をひそめ困惑している人々なのではないだろうか。
そもそも、そうした今のロックフェス的バンドの大きなルーツである00年代の邦楽ロックバンドの代表格がGotch率いるアジカンというところもなんだか、示唆的である。
※とはいえ、そういった新しいシティ・ポップのバンドたちの音楽性には高い評価をしつつも、アジカン(Gotch)自身は、ここにきて改めて「王道のロック」にて彼らを迎え撃とうとしているのではあるが。
このことはまた機を改めて書きたい。
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次回からはAwesome City Clubから離れ、この「新しいシティ・ポップ」の流れをカウンターカルチャーという視点から掘る作業をもう少し続けてみたいと思います。
そして次に題材に選ぶのは、今ホットなceroを予定しています。
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