モダンタイムスの歯車が加速している、エンタメ業界
わたくし先日、ザ・ロキノン大好き系現役大学生と出会う機会がありまして、話をしたところ「最近のバンドの移り変わりが早くて追いつけない」とのことらしい…。
大学生でソレですか。。
さて今回は
歌番組の出演者がいつ見ても同じ顔ぶれなのも、一発当てた芸人が起用されまくった挙句半年も経たずに消えていく現象も、
— seaweedchan (@hiyocombuu) March 2, 2016
あるいは、新しい四つ打ちバンドが現れてはあっという間に似たようなバンドに取って代わられていくロックシーンでも、
根っこは同じ匂いがするんです
という話をします。
twitterで、はしょってつぶやいてみたんですが、ちゃんと書き直そうかと。
■矢継ぎ早に移り変わる「スピード四つ打ち」バンドの「旬」
冒頭でもふれたように、似たようなバンドが現れてはあっという間に新しいバンドに取って代わられていく。
そのサイクルはどんどん早くなっていて、まさにそうしたバンドの大量生産、大量消費時代という様相を呈しています。
代表的なのは、散々言われ尽してきたように、「四つ打ちで速いタテノリのバンド」ではあるかと。
というのも、四つ打ちでノリが良い場合、比較的容易に盛り上がるので、一定程度の人気=結果はすぐに出やすい、ということがあると思います。
CDを売ることより、ライブやライブグッズで収益を上げなくてはならない今の音楽業界的には、
「スピード四つ打ち」は言ってみればライブ中心で稼いでいくための「勝ちパターン」のフォーマットになっているといっていいでしょう。
つまり、売上としての合格点は最低でも取れる、確実に失敗はしないフォーマットなのだと思われます。
しかも、ある程度の結果が現れるまでが比較的早い、というのもポイントです。
もちろん、「売れるかどうか安心できないので、無難に売れそうなフォーマットを取る」
というのはこれまでも定石かとは思いますが、これがどうも過剰になってきている感じがします。
だってこのフォーマットは「ロキノン系」「フェス系のアーティスト」というようにカテゴリ化されてきているくらい多いんですからね。
■「スピード四つ打ち」量産の背景?
そもそもこの流れの背景にはネット時代の趣味の多様化というご時世も大きく絡んでいます。
メディアやデバイスの種類が少なかった時代に比べ、みんなが一様に同じものに接するより、
今はもっぱら、個々人が自分の見たいものを見たいときに自分だけのデバイスで見るのが当たり前になっていますね。
特に若い世代には顕著で、TVをそもそも持っていないというほど。
たとえばこんなインタビュー。(これはTVについて絞ったものですが)
(下記、発言抜粋)
自分にとっての当たりの情報だけが欲しい
好きな時間に、自分の好きな番組を、観れるようにしてほしい
自分が興味のあるコンテンツだけを、自分の好きなタイミングで享受したい、というニーズが高まっているわけです。
スマホなど、パーソナルなデバイスでコンテンツに触れることが当たり前になっているからです。
そうなるといろいろな価値観や嗜好に人々が散らばってきます。
もちろん全員が全員バラバラというわけではないですが、、たとえるなら、人々は大都市に集中して住んでいるのではなく、部落が点々と存在しているようなかたちでしょうか。
―攻めたものに刺さる人は必ずいます。
ただ、果たして、どれくらいいるのか?どこにいるのか?が、そうした理由からとても予測しづらくなっているのです。
当たるか当たらないか、やってみないことにはますますわからない時代なのに、そんなものに投資できる勇気もない。
それはエンタメ業界の体力がないということの裏返しでもあるのです。ハズレが許されないほど余裕がないということ・・・
しかもじっくり腰を据えて育てる時間すらかけられないから、早く結果が出るモノのほうがなお良いとされているように見えます。
もちろん、その分早く「消費」されつくしてしまう=飽きられてしまう、ので、新しいバンドへの乗り換えがますます助長される ・・・
といった循環につながっているようにも思えますが。
それが「四つ打ちで速いタテノリのバンド」がもてはやされ、次々に投入されていっている背景のように思えてなりません。
■余裕のなさが生む、エンタメ業界の「モダンタイムス化」
とりあえず合格点の数字を追求するために冒険はせず、それなりに支持層の見込めるモノに飛びつきがちというこの傾向は、
いわゆるバンドミュージックだけでなく、ほかのエンタメ分野にも見受けられそうです。
歌番組の出演者がいつ見ても同じ顔ぶれなのも、一発当てた芸人や俳優、タレントが起用されまくった挙句すぐに消えていく現象も、あるいは、同じようなテレビ番組が多いのも、
根っこは同じと言えるでしょう。
「国民的」と冠をつけられがちな、AKBやジャニーズやEXILE TRIBEのみなさんだって、国民全員が好きなわけではもちろんありません。
というか結構な割合の人が実はそんなに興味はないと思います。
が、とはいえ他に比べれば好きな人がそれなりに多いのもまた事実。
ファンのみなさんの分だけ視聴率が取れれば、このご時世としては、まあ及第点の数字は取れそうな気がします。
よって、とりあえずAKBやジャニーズやEXILE TRIBEのみなさんを出しておけば、数字上は大コケすることはなさそうです。安心です。
「最近の歌番組は、いつも同じ人ばかり出ていて、興味がわかない、つまらない」
という声の背景には、そんな思惑が想像できます。
ある程度売れると分かりきっている金太郎飴のようなものを矢継ぎ早にとっかえひっかえ大量生産することで生き延びているのが今のエンタメ業界だとすれば、近い将来、歪みが出てしまうのでしょうか。
それはまるでチャップリンのモダンタイムスのようにも見えてきてなんだか複雑な気持ちになっている、今日この頃です。
サムネイル引用元:
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