ROTH BART BARONは音楽の未来を“取り戻す”ー小さな巨人たちへの5つのまなざし
ROTH BART BARONは、東京出身、2人組フォークロックバンド。
出典:ROTH BART BARON (ロットバルトバロン) | felicity (フェリシティ)
彼らは、東京出身といえども、スタイリッシュにキメてるわけでもなければ、小洒落てイケてる風を装うわけでもない。
彼らの音楽もまた、決して前衛的なわけでもなければ攻撃的でもない。
ただとても素朴にあたたかに紡がれる彼らの音楽は、しかし、どこまでも伸びやかで、そして力強い。
彼らを知ったきっかけははっきりとは思い出せないが、少なくとも、初めて見た動画は「小さな巨人」のMVだったと思う。
壮大で高揚感溢れる豊かなバンドアンサンブル、そしてなにより、シルキーで神秘的、それでいて大平原の真ん中に立ったかのような心地にさせられる開放的なファルセットから真っ先に思い起こしたのはもちろん、Bon Iver。
日本にもこんな歌を歌えるアーティストがいるなんて、というのが第一印象ではあったけれど、初めて彼らのライブを観終わった時、その印象とはまた違う手応えを感じていた。彼らは巷にいくらでもいるような、ただただグッドミュージックを鳴らすだけで満足している、「いい子ちゃん、だけど退屈」なバンドの類ではないということがはっきりとわかったからだ。
そのことが筆者にとってはなによりも興奮する発見であったし、そういうバンドが日本にもちゃんといることが、心から嬉しかったことを覚えている。
彼らをなによりも特別な存在にするのは、表現というものを、しなやかに、大胆に、捉え直そうという彼らの姿勢なのだ。
そんな彼らの表現は、とても新しい。
けれども同時に気づかされる。とても原初的でもあると。
そして、彼らの音楽・作品・表現は、想像力と創造力で、私たちに音楽のあり方についていつも投げかけてくる。
ただ、彼らはそれをプロパガンダとしてはっきり発信するわけではない(それだから私は好きなのだが)。
であるがゆえに、彼らのそういった音楽活動に対する姿勢がいかに特異であり、そして真摯であるかがリスナーに伝わりきっていないのではないだろうか、というわだかまりを、筆者は彼らを知ってからずっと、抱き続けてきた…
さて、彼らはちょうどまさに今、昨年末から実施していたクラウドファンディングのアイディアを具現化すべくイギリスに渡り、ヨーロッパでの活動を始動させようとしているところ。私ももちろん、支援しましたし、彼らのこれからの活動には本当にワクワクしています。
だからこそ、このタイミングに改めて、この一見ただの素朴なインディーズバンドのひとつに見える彼らの存在が、実は今、他のどのアーティストよりもエキサイティングであることを見つめ直し、伝えたいーー
そんな思いから、これから数回、おそらく数週間に分けて、この“エキサイティング”という意味、それは「ROTH BART BARONは音楽の未来を“取り戻そう”としている」という意味であることを、このブログ記事のシリーズを通じて、5つの観点(音楽性・歌詞・ステージ・プロモーション・作品の「かたち」)から、筆者なりにつらつらと綴っていこうと思っています。
ROTH BART BARONは一介のインディーズバンドでありながらも、音楽の「過去のかたち」を継承し、その上で「未来」に勇敢に立ち向かおうとする、まさに「小さな巨人」。その意味が、今、1人でも多くの人に伝わってくれれば本望なのです。
それでは、少々長くなりますが、これから数回の更新をお待ちください!
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